【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 色気とまで言われて流石に照れていると、愛良の横にピッタリくっついているスーツ姿の零士が鼻を鳴らす。

「フンッ中身でその見た目も全部台無しだけどな」

「はぁあ⁉」

 こいつはどんな時でもケンカを売らないと気が済まないんだろうか。

 スーツ姿が綺麗に決まっているからまたさらに腹が立つ。


「お姉ちゃん、落ち着いて。岸さんも止めてください!」

 間に入った愛良の言葉に私はピタッと止まる。


 そうだ、零士とケンカしたら永人は嫉妬するって言ってたっけ。

 その後にされたもろもろを思い出して恐る恐る今まで黙っていた永人を見ると、「あ、ああ……」と気のない返事をしてこちらに近付いて来た。

 何だか様子がおかしい。


 そう言えば、着付けを終えて合流してからずっとこんな感じだ。

 元気がないとか、そういう感じじゃなさそうだけれど……。


「……永人? どうしたの?」

 様子のおかしい永人に、零士への怒りもほっぽりだして付く。

 小首を傾げて見上げると、彼は口元を片手で押さえて私から少し視線をそらした。

 本当に様子がおかしい。


「ね、大丈夫? 具合悪い?」

「いや、違う。……そうじゃなくて……」

 何だか戸惑っている様子がいつもと違いすぎて心配になるけれど、私は黙って永人の言葉を待った。

< 708 / 741 >

この作品をシェア

pagetop