元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「もしかしたら、犯人はラウルとは関係ない子かも」
「え!?」
またしても驚く。
「さっき先生とレティを見ていてそう思ったの。もしかしたら犯人はユリウス先生のことが好きな子なんじゃないかって」
「!?」
階段の踊り場で私は思わず足を止めていた。
てっきりラウルのことを好きな子だと思い込んでいたけれど、ユリウス先生だって歳が離れているというだけであんなにも素敵なのだ。私のように先生に恋している子がいても全然可笑しくない。
「もしそうなら、毎日のように先生のとこに通っている私を邪魔に思って当然だよね……」
「でも! だからって悪いのは全面的に向こうなんだから、レティが気にする必要は全くないのよ!」
「うん……」
力なく頷いたそのときだった。
「レティシアさん、少しよろしくて?」
「えっ」
その声と口調にギクリとして振り仰ぐ。
階段の上に立っていたのは案の定イザベラだった。
「う、うん」
頷くと彼女は周りを気にするように視線をきょろきょろとさせながら小走りでこちらまで下りて来た。
「実はお伝えしておきたいことがありますの」
またラウルのことだろうか?
誤解は解けたというのに長年の癖でどうしても身構えてしまう。でも――。