元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「文字にあの地方独特の癖があるんですよ。貴女は気づいていないかもしれませんが。例えばこの字、普通3画で書くところを繋げて1画で書いています。あとこの部分やここを長く伸ばすのも特徴のひとつです」
「そ、そんなのは、」
「調べてみましたが、この学園に他にシャンドリー地方の出身者はいませんでした。ミレーナ先生、貴女だけなんです」
「……」

 今度こそ決定的に思えたが、ミレーナ先生は再びふっと笑みを浮かべた。

「だからって、それが証拠にはならないんじゃないかしら。私が実際にそれを書いたり差し込んでいるところを見たわけではないのでしょう? それに、そもそもなぜこの私が生徒に嫌がらせなんてする必要があるんです?」
「それは……僕にもわかりません」

 そう答えたユリウス先生に私は驚く。
 ミレーナ先生が呆れたように大きなため息を吐く。

「ちょっと、これまずいかも」

 アンナが焦るように呟く。
 そして、ミレーナ先生は勝ち誇ったように告げた。

「ユリウス先生。これ以上私を犯人扱いするんでしたら、侮辱罪で訴えますよ?」
「――ちょ、ちょっと待ってください!」
「レティ!?」

 気が付けば、私は植え込みから飛び出してしまっていた。

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