元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「もうそういうことは無さそうだから大丈夫よ。……それより、」

 スっとアンナが目を細めた。

「もしかしてラウル、私たちの後をつけていたの?」
「ち、違う!」

 急にラウルが慌てたように声を荒げた。

「俺も昨日は街に出てて、そしたらお前たちの姿が見えたから」
「それでつけていたと」
「だから違うって言ってんだろ! と、とにかく、あんまりアイツに気を許すなってことだ!」
「アイツとは誰のことかな?」
「リュシアン様!」
「げぇっ」

 この間のように突然隣に現れたリュシアン様からさっと距離を取るラウル。リュシアン様の斜め後ろには当然のようにマルセルさんが立っていて。

「おはよう、姫。そしてご友人。昨日はとても楽しかったよ」

 そう笑顔で言われて、ラウルの手前気まずいながらも立ち上がって挨拶する。

「おはようございます。こちらこそ、昨日はありがとうございました」

 アンナも私と同じように挨拶を返した、そのときだ。
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