元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「うん、私はいつでも構わないよ。しかし大したことがなくて本当に良かった。アンナ嬢に心配ないとは言われたがやはり心配でね。何度教室を抜け出そうと考えたか知れないよ」

 心からほっとした様子のリュシアン様にもう一度お礼を言って、同時にアンナの呼び方が変わっていることに気が付いた。

「あの、リュシアン様」
「なんだい、姫」
「その、“姫”って呼び方なんですが、今の私は姫ではないので普通に“レティシア”と呼んでいただけたら嬉しいのですが……」

 思い切ってお願いすると、リュシアン様は数回瞬きしてから笑顔で頷いた。

「姫がそう言うなら……レティシア、これからはそう呼ぶことにしよう」
「はい!」

 正直、皆の前で“姫”という呼び方は大分恥ずかしかったのでほっとする。
 ――そして、私はランチタイムになるのをそわそわと待った。

< 177 / 260 >

この作品をシェア

pagetop