元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
 


 それから、彼に手を引かれどれくらい歩いただろう。
 自分の足でこんなに歩くのは、もしかしたら初めてかもしれない。
 天を見上げると、真っ黒な木々の隙間に満天の星空が見えた。……月は見えない。
 そろそろ日付が変わる頃だろうか。
 それとも、もう変わっただろうか。
 私の誕生日は――。

「姫様」
「え?」

 呼ばれて視線を戻すと、クラウスが私を見つめていた。

「もうすぐです。あと少しだけ頑張ってください」
「えぇ。私は大丈夫よ」
「そこで、ルシアン様がお待ちです」
「――え?」

 自分の喉から、声にならない音が漏れた。
 彼は今、なんと言っただろう。
 大好きな声で、大好きな彼の口から出た言葉なのに、私の頭は受け入れなかった。

 そんな私に止めを刺すように、クラウスは酷く優しい声音で告げた。

「これからはルシアン様が、姫様を守ってくださいます」


 ――!!

< 183 / 260 >

この作品をシェア

pagetop