元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 でも、私は諦めなかった。
 前世での私、セラスティアは彼に想いを伝えられなかったことを悔いたまま命を落とした。
 だからこうして生まれ変わって再会できた今、この想いを隠さずに伝えようと決めたのだ。

 と、先生がはぁと呆れたような溜息を吐いた。

「もし本当に貴女がそのお姫様の生まれ変わりだとして」
「生まれ変わりなんです~」
「なぜその騎士が私だと思ったんです。勘違いでは?」

 ぶんぶんと首を横に振って私は顔を上げる。

「間違いないです。髪色や目の色は違いますが、私にはわかるんです」

 クラウスは金髪に碧眼だった。
 結城先生は黒髪、そして――眼鏡の向こうの今はダークブラウンの瞳をじっと見つめる。

「先生は間違いなく、セラスティアが想いを寄せていた騎士クラウス。その生まれ変わりです」
「……」

 先生は私から視線を逸らし今度は短く息を吐いた。

「残念ながら私に前世の記憶なんてものはありません」
「なんでだろうなぁ~~」
「花咲さん。後がつかえていますので、そろそろ本題に入らせてください」
「は~い」

 その声がほんの僅か低くなったことに気づいて、私は仕方なく背筋を伸ばし本題である進路面談に集中することにした。

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