元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

(怒るとちょっとだけ声が低くなるところなんかも、クラウスまんまなんだけどなぁ)

 ――おはようございます姫様。本日もこのクラウス、貴女様を全力でお守りいたします。
 ――姫様。なかなかお戻りにならないのでお迎えに上がりました。
 ――姫様。そろそろお休みになられてはいかがですか? 明日の公務に響きますよ。

 私が王国にとって大切な『聖女』だったからだろう。
 クラウスはとにかくセラスティアに対し過保護だった。
 でもいつも優しい笑みを浮かべていた。その笑顔がセラスティアは大好きだった。
 
 来月の誕生日、私は18歳になる。
 今の私に奇跡の力なんてない。聖女の証もない。
 だから前世のような酷な運命は待ち受けていない。
 このまま何事もなく平和に過ぎるのだろう。
 でも私にとってその日はやっぱり特別で――。
 
(せめてあの頃のような笑顔で「おめでとう」って言って欲しいなぁ)




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