元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 前世の、クラウスのことならなんでも話せるのに。
 
(ユリウス先生のことは、知らないことばかりだ)

 机の下で強く拳を握りしめていると、ラウルが勝ち誇ったように続けた。

「決定的なのは、一番最近の事件だ」

 一番最近……アンナが昨夜話していたこの学園の近くで起きたという事件だろうか。

「その日の夜、アイツが寮を出ていくのを目撃したやつがいんだよ」
「!?」

 目を見開く。

「だからな、レティ。アイツにはもう近づかない方が」
「私は、先生を信じてるもの!」

 そう叫んで、私は逃げるように教室を出た。



 ユリウス先生が誘拐犯?
 まさか、先生がそんなことをするはずがない。
 だってユリウス先生は、あの優しかったクラウスの生まれ変わりで……。

 ――僕はクラウスではありません。

 先生の声が蘇る。
 
 ――なら、お前はアイツの何を知ってんだ。
 
 続いてラウルの声が耳に響いた。

 ……確かに、私はユリウス先生のことは何も知らない。
 どこから来たのか。この学園に来る前は何をしていたのか。好きな食べ物すらも。
 
(それでも私は――)
 
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