元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「私、あのとき身体が震えて何も出来なかったことが悔しくて……何のために護身術習ってきたんだろうって。だから、もし次あの人が来たら、私レティを守るわ」

 アンナは初等部の頃から護身術クラブに入っていて、私も彼女が強いことは知っている。

「ありがとう」
「でも、明日お家に帰っちゃうのよね。寂しくなるわ」
「私も」
「でも仕方ないわよね。確かに、レティのお家の方が絶対に安全だもの」
「うん……」

 本当にそうだろうか……? 心の中で呟く。
 ルシアン様のあの笑みを思い出すと、どこにいても安全ではないような気がして。

(本当はこの学園から……ユリウス先生から離れたくないのになぁ)

 その夜は言い知れぬ不安に、なかなか寝付くことが出来なかった。

< 45 / 260 >

この作品をシェア

pagetop