男装令嬢は竜騎士団長に竜ごと溺愛される
コンコンコン。

約束の時間にノックを鳴らす。
中から返事が無い為、
「失礼します…。」と、そっとドアを押し1人入る。

中には誰も居なかった…
 
鍵もかけずに不用心では?と、少し思いつつも大人しくソファに座り待つ事にする。

突然、プライベートルーム側のドアがガチャっと開いてカイルが出てくる。

サラもビックっとして振り返る。
一瞬カイルが動きを止めてサラを凝視する。

「すまない。少し待たせたか?」
そう言って何事も無かった様に近づいて来る。

「いえ、今来た所です。」
サラはソファから立ち上がり、頭を軽く下げる。

「…1人で来たのか?護衛は?カンナは?」
怪訝な顔で言ってくる。

「一階下に降りるだけですし、1人で平気かと…。団員の身辺調査も終わったと聞きましたし。」
本当、心配症で過保護な所は相変わらずなのね…。

出来れば、素のカイルに会いたくて誰も付けずに1人で来たのだ。

「ところで今日はどんな用事なのですか?」
カイルのお説教が始まる前に急いでサラは話しかける。

「今からルーカスの所へ連れて行く。
ルーカスは明日城下の軍本部に移動になった。」

「わがままを聞いて下さり、ありがとうございます。」
サラは素直にお礼を言う。

カイルに促され部屋を出て、階段を降りる。
その間も特に二人に会話は無く、たまにすれ違う団員と挨拶を交わすだけ。

なんだか寂しい…とサラは思う。

この何週間でカイル団長との距離がどんどん遠くなるのを感じる。 

私の事なんてもう好きじゃ無いのかもしれない…。
一歩先を歩くカイルの背中を見つめながら泣きそうな気持ちになる。

本邸を出て宿泊寮を超え、庭を奥に進むと知らない場所に物々しい建物が立っているのが見えて来た。

「ここは、勾留場だ。
不貞を働いた物を一時的に預かる場所だ。今はルーカスだけがいる。」
厳重な警備体制らしく、外に門兵が二人中に三人が配置され重たい扉を計五人で開けてくれる。

「行くぞ。」
カイルに着いて中に入る。
中の空気は冷んやりしていて重苦しく、途端にサラは緊張する。

岩で作られた壁に鉄格子の窓、重々しい牢屋が続き、サラの心臓はバクバクと嫌な音を立てる。

先を歩くカイルが一度足を止め、振り向きサラの顔色を伺う。

「大丈夫か?リューク殿。」

一瞬見つめ合い、サラは深く深呼吸してカイルに頷く。

一番奥の部屋でカイルは足を止める。

「ルーカス、リューク殿がお前と話しをしたいとの事だ。」
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