怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました
三年間の契約ではなく、一生そばにいてほしい。
彼女の誕生日に入籍する際そう伝えようと決めて、婚姻届や指輪も抜かりなく準備していた。
しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。
拓海が当時携わっていたのは、日本とドイツが主導する環境政策の企画立案で、国連総会やG7でも議論を交わす大きな政策を取りまとめるには、莫大な時間と労力、そして情報が必要となる。
環境先進国のドイツと各国の足並みを揃えるのはもちろん、どんな政策にも反対意見は付き纏い、指摘されそうなウィークポイントをひとつずつ潰していくのも骨が折れる作業だ。
日本の内閣官房を含む他省庁や、ドイツの連邦政府と密接に協力し合い、少しずつ形にしていく。
責任の大きさに緊張感はあれど、気分が高揚し世界を相手に仕事をしていると実感できる。
国際社会のためになる仕事に誇りを持ち、必死に職務にあたっていた拓海だが、不穏な情報を耳にした。
「嫌がらせ?」
「そう。これで三件目だ」
大きなため息を吐く同僚の話によると、日本の外交官の自宅に生ゴミが送りつけられたり、車がパンクさせられたりしていたという。
さらに大使館に届いた手紙。
『環境政策から手を引け。我らを苦しめる輩に“明るい未来”はない』
赤い文字で書き殴られている手紙は、禍々しい気配に満ちている。