怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました

さらに拓海から、ドイツのマイヤー夫妻にも連絡をしようと提案された。

モニカ夫人にはとても良くしてもらったのに、なんの報告もなしに帰国し、拓海との接点を消そうとメールアドレスも変えたため、それ以降一度も連絡をとっていない。

不義理この上ないと落ち込み、ずっと気にかけていた。

「例の大使館脅迫の件はマイヤー議員の耳にも入っていると思う。俺が事情を説明するし、モニカ夫人もきっと沙綾を心配してる。彼らにも結婚を報告しよう」

そう背中を押され、沙綾はモニカ夫人へ手紙を出した。

三年もの間音信不通になってしまった謝罪と、ドイツでの経緯と結婚報告、許してもらえるのなら着物の着付けを教える約束を果たしたい旨を丁寧に綴り、新しい連絡先を添えて送ると、先日メールが届いた。

湊人の存在への驚き、結婚への祝いの言葉とともに、再び会えるのを楽しみにしていると記されたメッセージを見て、心の奥につかえていたしこりが取れた気分だ。

今度拓海とともに呉服屋に行き、マイヤー夫妻へ着物のプレゼントを買おうと計画している。

数日前の出来事を思い返しながら到着した城之内邸は想像していた以上の豪邸で、緊張から顔が強張った。

土地柄立派な門構えの邸宅が並ぶ中、拓海の実家は曲線を多用したモダンなデザインながら、白レンガ積みの外壁が外国の雰囲気を漂わせていて一際目を引く。

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