怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました
映画やドラマから抜け出てきたかのような抜群の容姿は周囲の目を惹き、沙綾もまた、彼に釘付けになる。
艶やかな黒髪のサイドを撫でつけ、額を出したヘアスタイルは、いかにもデキる男といった雰囲気で、質のいいスーツの上からでも鍛え上げられた体躯がわかる。
睨んでいるわけではないのだろうが、力のある目元は印象が強く、まるでこちらの心の中まで見透かしそうな瞳をしている。
「君は……」
沙綾がじっと見つめすぎたからだろうか。目の前の彼が怪訝な表情で自分を凝視しているのに気付き、慌てて顔を下に向ける。
それでもまだ前からの視線を感じ、居心地を悪く感じながら、交換したプロフィールカードを真剣に読んでいる風を装った。
(えっと、お名前は、城之内拓海……え?)
城之内拓海。その名前には覚えがあった。
沙綾は驚きながら他の項目に目を走らせる。
職業欄に外務省勤務と書かれているということは、いわゆる外交官だろうか。
思い描いている人物なら、エリートと名高いキャリア官僚になっているのも納得だ。
(出身大学、私と同じ。やっぱり間違いない、拓海先輩だ……)
拓海は沙綾の三つ年上で、同じ大学のESSサークルに入っていた。
英語劇を上演するドラマ班と呼ばれるグループに所属していた沙綾とは違い、拓海は英語を使って主義主張を述べ勝敗をつけるディベート班で代表を務めていた。