年下彼氏の結婚指導
「なぁ昼一緒に行こうよ、相談したい事があるんだ」
「相談? 嫌よ、他を当たって」
 どうして別れた男の相談になんて乗らなきゃならんのだ。
 くるりと踵を返す華子に堅太の声が追い縋る。
「そんな事言わないでよ。立川(たちかわ)さんさ、華子の同期の。俺たちの事知ってるから俺に冷たいんだよ。それで仕事がやりにくくて困ってるんだ。ねえ、頼むよ」
 
 ピタリと華子の足が止まる。
 ──立川の事は勿論知っている。
 華子の同期の男性社員で、責任感の強い男だ。
(私のせい……?)
 ちらりとそんな考えが頭を過ぎる。

 二年前。華子が振られて堅太が歳下の新入社員と付き合い出した事に、確かに彼は怒っていた。彼自身結婚が早く、学生時代から付き合っていた奥さんをとても大事にしているから。
(でもそれは、当人たちの問題だし……)

 確かに同期に愚痴を零した覚えがある。それで仕事に支障が出るならば、自分の過失、という事になるのか……

「……分かった」
 仕方なしとは言え、華子にはそう答えるしか無かった。
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