年下彼氏の結婚指導
13.
 居酒屋の奥座敷。
 会場に着けば翔悟は既に先に着いた課員に囲まれていた。何やら熱心に話している様子すら微笑ましい。

 そういえばこの短い期間で彼はすっかり部内に馴染み、可愛がられていたんだった。
 苦笑する華子に気付き、翔悟がパッと顔を輝かせた。

「華子さん」
 嬉しそうな顔をして華子のコートを受け取る姿を見て目を丸くする。
 ──華子さん?

「わあ、仁科さん。もう尻に敷いてるんですかあ?」
 思わず首を傾げていると、続く揶揄いに華子は目を丸くして、それから翔悟をジロっと睨んだ。
「……そんな筈ないでしょう。もう廉堂君、一体何を話していたのかな?」
「いやあ。研修期間中の華子さん、情熱的だったもんで」
 照れ臭そうに笑う翔悟に戸惑いながらも、華子は場の雰囲気を壊さないように笑顔を作る。一体どんな話で盛り上がって、こんな展開になっているのか。

 にまにまと笑う課員たちに促され、華子は翔悟の隣に座らされた。
(え、えええ? これは私、今日は揶揄われる立場なのね……)
 とは言え、最後にこの距離感は有り難い。
 翔悟に期待していた女子たちには申し訳無いが、華子も自分の気持ちを大事にしたい。与えられたチャンスを活かしたい。
 ジッとこちらを見つめる結芽の視線から意識を逸らし、華子は隣の翔悟をそっと見上げた。
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