年下彼氏の結婚指導
「その人がうちの部に研修にくるだけで嬉しいのに! 仁科さん教育係ですよ、マンツーマンですよ! 分かってるんですか?!」
「うーん。まあ眼福よね、きっと」
 嫌いな顔立ちではないけれど、顔は全てではないと華子は思う。とは言え結芽の気持ちも分からなくはない。
(まあ、それも仕方ないか)
 
 彼女は今年二十五歳。
 まだまだ若く溌剌とした一女子社員なのだ。
 明るく染めた髪に流行りのアクセサリー。愛らしい容姿は垢抜けているし、素敵な男性に胸をときめかせるお年頃だ。
 そんなウキウキとした心境は、その年頃の華子にだって覚えがある。

 とはいえ華子は教育担当になるのだ。結芽と同じようにはしゃく訳にはいかない。
「……うーん。でも、去年もいたじゃないカッコいい人とやら。……ていうか毎年いるわよね? 一昨年もいたし……?」
 そう濁せば結芽はキッと眼差しを強めた。

「そんな昔の話! そもそも去年はうちに研修に来たのは女の子だったじゃないですか!」
「あー。うん、まあそうだけど……」
「そういえば彼ら、出身大学も同じらしいですよ。いいなあーハイスペックな男子が多い大学なんて。はあ〜、お近づきになりたい」
 両手を組んでうっとりと天井を見つめる結芽に華子は苦笑を漏らした。
「でも観月さん、何だかんだで仲良くなっちゃうじゃない?」
 華子の会社は社内恋愛は自由である。
 行事の手伝いには部署を跨いで駆り出されるし、そういった繋がりで社内の恋愛率は高い。
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