年下彼氏の結婚指導
 なので。
 確か結芽は去年のNo.1とも、しっかり縁を繋いでいた筈だ。
 すると結芽は腰に手を当てて頬を膨らませた。

「もー、そんな昔の話。去年の人は受付の子が持って行っちゃったんですよー。やっぱり秘書や受付は強いですね。でも今年はマーケティング部も負けてませんよ! スタートダッシュが違うんですから!」

 結芽は何やらめらめらと燃えているが、華子としては仕事に差し障りがないならまぁいいか──と思ったところでふと思い立つ。
 そうだ、イケメン到来で部が浮ついた雰囲気になっても困る。

「分かった分かった。分かったから仕事はしっかりね。新入社員に先輩として失望されないように、手本となる一ヵ月を心掛けて下さい。はい皆さんもよろしくね!」

 パンパンと手を叩き声を張る。
 この話題を「イケメン楽しみ」なだけで終わらせてはいけない。既存部員の士気も上げて貰わないと。
 華子は上司の顔で場を締めた。

「しっかり者より甘え上手な方がいいに決まってるー」

 そんな結芽の呟きは、聞こえなかった事にした。
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