磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
残された悠馬は目を丸くして、出口のドアを見つめていた。

───今、『ありがとう』って言った?あいつが?信じらんね・・・だからかな?なんか胸の辺り、変な感じする。あいつの顔が目に焼き付いて・・・なんか頬染めてたし・・・。

ふと手元の紙袋の存在を思い出し中を覗いてみる。本が入っていたので取り出してみるとエキゾチックショートヘアの写真集で、パラパラめくってニヤついてしまう。

家でゆっくり見ようと思い本を戻すと、紙袋の中にさらに紙袋が入っていることに気がつく。

中身は『冷蔵庫に入れて』と書かれたふせんが貼ってあるランチボックスだった。ワゴンカーでお弁当を売りに来るお店で使っているような使い捨ての容器だ。

蓋を開けてみて驚く。ボリュームたっぷりで色鮮やかな手作りのお弁当だった。

───これ、あいつが?・・・な、なんだよ、また胸の辺りが変な感じする。落ち着かないっていうか・・・。



一方真海はトイレの個室で息を整えていた。

───今頃あいつお弁当見てるかな?見てないでそのままにしちゃってたらどうしよう。渡す直前まで保冷バッグに保冷剤と一緒に入れてたけど・・・てゆーか、お礼にお弁当作るっておかしくないよね?ご飯おごるとかは、二人で行っても何話せばいいかわからないし、また玉川ちゃん達誘うのも悪いし・・・あー恥ずかしくて逃げてきちゃったけど、隣の席だから結局顔合わせるんだよなぁ・・・せめて他に誰か出勤してくるまでここでしばらく時間を潰そう・・・。

スマホを取り出しSNSをチェックするが、どんな写真もつぶやきも頭に入ってこず、機械的に『いいね』をタップし続けた。
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