磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
悠馬は自分の横を素通りし、ゆっくりながらも確実に入り口近くに立つ女性の元に向かうエクレアの後ろ姿を見送る。女性をよく見ると餌が入った小皿を持っていた。

───あ、他の猫もあの人のところに行ってる。俺も餌買おうかな。

真海は彼の視線が自分に向いていることに気づき、もう遅いかもしれないが反射的に後ろを向いて床に座った。

しかし彼が近づいてくる気配がする。

───バ、パレたよね、やっぱり・・・。

「・・・あの、すいません。」

悠馬が声をかけてくる。声のトーンがいつもよりも柔らかい。

「!?」

───まさか、気づいてない!?あ、今日はメイクも髪型も服装も違うから・・・。

今日のメイクは日焼け止め下地の上にBBクリームをのばし、テカり止めのパウダーを軽くはたいて、目元はカラコンとまつエクのみ、チークはなしで、唇には色つきリップ、というささやかなものだった。

髪は簡単にアップにしてバレッタで留め、服装は淡いブルーと白のストライプのシャツワンビに裾がクシュクシュした七分丈のスキニーデニム。

普段はばっちりメイクに下ろしたロングのパーマヘア、はっきりした色のトップスにタイトスカートというスタイルが多い為、なるほど自分とは気がつかないかもしれない。
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