磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
「は、はい・・・?」

そのまま振り向かずに小さな声で答える。

「餌食べてる猫の写真撮ってもいいですか?俺が買った餌じゃないですけど。」

「も、もちろんですよ。餌持ってると猫が群がってきて猫まみれになるから、写真どころじゃないですし。撮れる時に撮ってください。」

───わざわざ撮影許可をとるとか、北岡ってもしかしていいやつ・・・?

真海の──正確には餌の──周りにはたくさんの猫が集まってきていた。

「ありがとうございます!てか、猫まみれってウケますね。でも俺もなってみたい。後で餌買うから、俺が猫まみれになってる間に写真撮ってください。」

「い、いえ、私は何度も来てるから、写真は大丈夫です。」

───バレないうちに帰りたい・・・早く餌食べちゃって・・・。

心の中で猫達に懇願する。

「ここのホームページに『11時の開店直後は猫達が活発に活動します。』ってあったから、開店時間に来たけど思ったより大人しいですね。」

───なんでこの人ずっと後ろ向きなんだ?別にいいけど。

真海の焦りも知らず悠馬はなおも話しかけてくる。

「・・・あ、えっと閉店直前の時間もおすすめです。多分閉店後にご飯タイムがあるんだと思うんですけど、入り口近くに猫達が集まるんですよ。」

「えーっ!そうなんですか!それは良いこと聞いたな。会社帰りにも来てみようかな。平日だからすいてて猫独り占めだったりして。ふふふ。」

嬉しそうな悠馬がどんな顔をして笑っているのか見たくなってしまい、真海は思わず少し後ろを振り向いた。

その瞬間、一匹の猫が真海が胸の前辺りに持っていた餌の皿めがけてジャンプした。

「えっ!わっ!」

衝撃と驚きで真海はそのまま仰向けに倒れてしまい、悠馬と目が合う。

「だ、大丈夫ですか!?・・・え!?・・・今城!?!?」
< 28 / 118 >

この作品をシェア

pagetop