磁石な恋 ~嫌よ嫌よは嫌なだけ?~
悠馬の真剣な言葉は真海の心にじんわりと沁みこんでいった。

「うん、そうだよね・・・。」

───私のこと思って言ってくれてるってわかる。てゆーか、普通同僚にこんな説教くさいこと言わなくない!?こいつはいいやつなんだな、そう、ただいいやつってだけで、それ以外の何者でも・・・でも、なんか、胸が温かくて苦しいような・・・。

「!?・・・。」

───こいつにそんな風に素直に言われると調子狂う・・・にしても俺はなんでこいつのこと、こんなにどうにかしたいって思うんだろう・・・才能があるやつだからか?それとも・・・。

助手席に顔を向け、考え込む真海の横顔を見ているとふと彼女が顔を上げた。

夕日を顔に浴びて見つめ合う。

「・・・。」

───なんか今私、嬉しいっていうか幸せな気分かも・・・心地良くて、ずっとこうしていたいような・・・なんで?こいつといるのに・・・。

「・・・。」

───おい、なんでだかわからんが、すごくこいつに触れたい気持ちが自分の中にあるぞ・・・でも今日は触れる理由がないし・・・って、くそっ!俺は何を考えてるんだ・・・。

悠馬は飲みきった炭酸飲料のペットボトルを片手でぐしゃっと握り潰した。

「・・・そろそろ行くか。」

「・・・うん。」

真海はペットボトルにまだ3分の1ほど残っているレモンティーを口に含んだ。甘さと酸味と苦味が一度に広がる。様々な風味が入り混じっていて、まるで今の自分の気持ちのようだと思った。

でもそのレモンティーが美味しいのと同じように、今自分の中にある気持ちはとても心地良く感じられるものだった。
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