甘い恋をおしえて


結婚式と披露宴は無事終わった。
満足そうな義母の顔を見たり招待客から和やかな祝いの言葉を受けたりして、莉帆はやっと肩の力を抜いた。
千紘の助けを借りながら、派手すぎず格調も高くと知恵を絞ったのだ。
宮川家の嫁として認められるために全力を尽くしたという達成感はあった。

(これでイベントは終わった)

自分の晴れの日というより、周りのためだけに頑張ってきたのだ。

(ようやく佑貴さんとふたりきりになれる)

そう思うと頬が熱くなった。愛のある結婚ではないかもしれないが、彼と初めて結ばれる日だ。
少し緊張してきたと思ったら、ここ数ヶ月ずっと痛かった胃が爆発したように思えた。
ホテルのスイートルームに戻って気がゆるんだからかもしれない。

「痛い……」

胃が捻じれるか破れるかしたのではないかという痛みだ。
しかも部屋には莉帆ひとり。佑貴はまだ友人たちと飲んでいるのだろう。

莉帆は這うように部屋を出て、タクシーで救急病院へ向かった。
今思えば、ホテルのスタッフや佑貴に知らせるべきだったのだろうがそんな余裕は無かった。

病院に着いたとたんに気を失った莉帆が目覚めたのは翌日の昼過ぎだった。




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