大嫌いの先にあるもの
助けてもらいたいけど、相沢さんを避けている理由なんて話せないよ。
黒須への気持ちは絶対に言えないもの。

世の中、そう甘くないって事か。

王子様が助けてくれるのはおとぎ話の中だけだよね。

現実はそう都合よくいかないよね……。

「大丈夫です。特に困ってません」

「本当に?」

「はい。何の問題もありません」

「私を避けていた理由、そんなに言えない事なんですか?」

「避けていません。相沢さんの勘違いです」

「私の勘はよく当たるのですが」

「今回は外れです」

「強情な人だ」

相沢さんが苦く笑った。

「もういいですか?帰りたいんですけど」

「そうですね。行きましょうか」

相沢さんがソファから立ち上がった。

「車でご自宅まで送ります」

相沢さんが私を送る?なんで?

「なんでって顔してますね。黒須に頼まれているんです」

黒須……。

「一人で夜道を歩かせるのは危ないから絶対に送って行くようにと言われています。断っても無駄ですよ」

Blue&Devilの日は帰りはいつも黒須が送ってくれていた。断っても夜道を歩かせる訳にはいかないとか言って……。

黒須、相沢さんに私の事頼んでいたんだ。
留守の時も心配してくれているんだ。

連絡がなくていじけていたけど、黒須は大事に思ってくれていた。
やっぱり私は大切な妹なんだ。

何か目の奥が熱い。嬉しくて泣きそう。
< 145 / 360 >

この作品をシェア

pagetop