大嫌いの先にあるもの

不幸のはじまり

「きゃゃゃーー!」

前の扉から講師が入ってくると、女子たちの黄色い声が一斉に上がった。
まるで芸能人を出迎えるよう。

教壇の前に立つ彼は今日もチャコールグレーのスリーピーススーツがよく似合う。その上、目鼻立ちが整った甘いマスクに優しそうな天使の笑顔。

彼を嫌いな女性はいないだろう。

私を除いては。

定員400人の階段教室は毎回満席となる。

この講義は必修科目でもなく、経済学部の三年生向けに開講されている選択科目なので、この集まり方は異常と言える。

実際に履修している学生は100名程度ではないだろうか。

しかも圧倒的に女子が多い。
うちの学部は8割が男子のはずなのに。

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