大嫌いの先にあるもの

Los Angeles【Side黒須】

羽田からおよそ10時間の空の旅を終えて、ロサンゼルス国際空港に着いたのは現地時間で午前11時過ぎだった。

カリフォルニア州の南部に位置するこの地に来たのは三度目だ。一度目は大学時代に友人とで、二度目は美香と来た。どちらも観光だった。

三度目の今回は、美香の友人のジャズピアニスト、ジャニス・ウォーターの叔母に会う為だった。
ジャニスと美香が亡くなって5年経つが、未だに2人に何があったのか真相はわからない。

三友商事の会長の三田村さんに紹介してもらった大河内さんからジャニスの叔母について報告があったのは大学の研究室で春音を待っている時だった。

大河内さんの使いが研究室まで訪ねて来て、調査報告書を置いて行った。
そこにはジャニスの叔母が鍵となる人物について知っている可能性がある事が書かれていた。

すぐにジャニスの叔母に連絡すると、明日からは映画の撮影で留守にし、今日までだったらマリブの自宅にいるとの事だったので、慌てて日本から飛んで来た。

春音に何も言わずに来た事は少しだけ心残りだ。
飛行機に乗る前に何度か春音に連絡しようとしたが、ジャニスの叔母から事件の真相が聞けるかどうかもわからなかったので、結局は連絡しなかった。

スマホを見ると春音からメッセージが届いていた。

“お仕事お疲れ様。帰りを楽しみに待っています”

自然と頬が緩む。
そうか相沢、美香の事件の事は伏せて仕事だと言ってくれたのか。確かにそれがいい。何が聞けるかわからない状態で春音を悪戯に期待させたくない。何もわからない可能性の方が高いのだから。

帰りを楽しみに待っているか。
ロサンゼルスに着いたばかりなのに、もう春音が恋しいな。
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