だいすきボーイフレンド
晴人の荷物はあっという間に仕舞い込まれた。案外少なかった。

まだ1ヶ月も経ってないもんな。

「1ヶ月も持たなかったな」

私が言うと、晴人は笑う。

「もしかしたら俺、最短記録かもしれん」
「私もやで」

玄関まで来て、晴人は白いキャンバスのスニーカーを突っ掛ける。

「好きやったよ、ずっと」

ずっとの言葉の重みがダイレクトに胸に落ちる。
重いねんて。

「好きになれんくてごめん」

私は謝ると、鼻を擦りながら笑う。

「謝らんといてよ」
「うん、ありがとう」
「何がありがとうなん」
「ずっと」

そこまで言って次に続く言葉を探す。

ずっと、なんなんだろう。

晴人はずっと、なんだったんだろう。

「ずっと、一緒にいてくれて」

私の目の縁の堤防が崩壊する。
涙が一粒頬を伝って流れると、おかしくなったんじゃないかというほど次から次へと溢れ出す。

これはなんの涙なんやろ。

晴人がそっと私に腕を回して、頭をぽんぽん撫でてくれる。

「ありがと」

そう言われると、もう私は何をしでかしてしまったんやろと後悔に包まれる。

「ありがとう」

そう言う私の声は震えていた。

あほや、私は。
なんでこんな上手く生きられないんやろ。

晴人はふわっと離れると、紙袋とリュックという大荷物で部屋を出て行った。

余りにも早い。

余りにも早すぎる。

ドアがバタンと閉まる。
晴人と私の歴史が終わった。

セミの一生みたいな恋だった。
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