だいすきボーイフレンド
呆れたように晴人は体を起こし、部屋を見回す。
ゆっくり立ち上がり、自分の物たちを一つ一つ集めリュックに入れ始めた。

「何してん」
「ごめん、俺が悪かった。別れよ」

涙が、目からは出てこない割に、喉の奥が痛くて、また唾を飲み込んで、涙が流れるルートって顔の内側にもあんのやろな、と感じた。

全部私が悪い。

「ごめん」

私もそれだけ言うと、晴人は雑に頷いた。晴人のウェーブがかった前髪が揺れる。

私には見せないけど、鼻をすする音が部屋に響く。

「出てくん」

私の問いに、初めて私の方を見て「出てくしかないやろ」と言った。
その顔は泣いていた。

好きになれんかった。

また更新してしもた。

最後に残されたゲームの機材はリュックには入らなかった。
私は紙袋を差し出す。

「ゲーム置くな言うてたもんな」

晴人は泣きながら笑った。

「一番邪魔やねんて」
「はいはい」

怠そうに紙袋に仕舞い込んでく。本体も充電器もコードも。

「わざと残して、今度部屋に来る口実にしよ思てたけど、それもなしやな」

また痛々しく笑う。

「なんで私のこと好きやったん」
「知らん、理由なんてないよ」

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