ピエロの王様

「っ、毒だ!!食事をやめろ!」

銀のフォークが音を立てて床に落ちる。

周囲の召使い達がざわめいた。

食事の席で毒が混入することは、

大して珍しいことではない。

普段は毒味役が確認した際に、

毒の混入に気がつくものである。

つまり今回は毒味を終えた料理に、

毒を混入された可能性が高いのだ。

「皆、早急に机を離れろ。」

六華の鋭い声の後に続く芯のある声。

眉間の皺を一層深くした男の声である。

彼は六華の父親であり、彼こそが王。

つまりこの宮殿の主なのだ。

「…深雪兄様?」

先程は人形のように他人に興味を、

持たなかった少年が青年に声をかけた。

怯えたようにやっと薄い唇を開く。

机を離れない青年を不審に思ったのだ。

「…っ、」

先程は六華に微笑んでいた青年…。

しかしその顔は青白く血の気を失い、

唇は痙攣するように震えていた。

滝のように汗をかいて荒く息を吐く。

六華はその光景にヒュッと息を呑んだ。

「どうしたのですか?…深雪兄様!」

少年は未だ椅子を離れない青年に、

痺れを切らして手をのばす。

が、その手が触れる前に崩れ落ちた…。
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