ピエロの王様
広間に冷え切った料理が並んでいる。
立派な長い机には白いテーブルクロス、
洒落た白い椅子に座る人間達。
六華の姿を見て微笑を浮かべた青年。
六華には無反応で正面を見据える少年。
ロングドレスを纏った無表情の女。
眉間にくっきりと皺を寄せた男。
「遅い、馬鹿息子が。」
男は六華にピシャリと良い放つ。
「…申し訳ありません。」
渋々1つ空いている椅子に腰をかけた。
男が息を吐いて周囲に目配せをする。
それに伴い椅子に腰かけた他の四人が、
祈るように手の指を絡めた。
「では、全ての者に幸あらんことを。」
『頂戴致します。』
食前の挨拶の後、五人は食事を始めた。
静かで上品…まるで絵画みたいだ。
六華はこの時間が苦痛で仕方がない。
誰も口を開かない食事のせいで、
食器の小さな音がやけに耳に響く。
六華は溜め息を堪えるのに必死だ。
食事はバランスのとれた味気ないもの。
町の出店のジャンクフードが恋しい…。
六華はとうとう小さく溜め息をつき、
茹で野菜の入ったサラダボールへ、
上品にフォークをブッ刺した…。
人参でソースを掬い、鼻を寄せる。