天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています

お墓参り

「佐倉さん、こっちです」

私たちは東京郊外にある母のお墓参りをするためにやってきた。
東京から電車を乗り継ぎ1時間半、少し不便なところで、少しだけ高台にあるお墓だ。
本来なら林田のお墓に入れたら良かったが許されず、そもそもお葬式にもきてもらえなかった。
そこまで憎いのかと当時思ったのだが、よく考えてみたら娘を不幸にした私が憎かったのかもしれない。
うちにある貯金で買えるお墓を考えると、家からは遠いが母の好きな自然に溢れたこの場所がいいと思えた。
佐倉さんと新宿で待ち合わせをし、電車とバスを乗り継ぐとようやく霊園についた。
あとは少しだけ登れば見えてくる。

「大丈夫ですか?」

階段を上がると少し息が上がっている佐倉さんに声をかけた。

「大丈夫だよ。でも、運動不足だな」

「私もです。見晴らしはいいけど運動不足を実感させられます」

2人で顔を見合わせると笑いあった。

ようやく墓前に着いた。
私は掃除をしたり古い花を捨てたりしていると佐倉さんはバッグから色々と取り出してきた。
ジュースやお菓子、それにたこ焼きが出てきた。
どうりでなんだかいい匂いがすると思った。
佐倉さんが持ってきた花の包み紙をはずし、一対になっていたものを花立に入れた。
今日は先日より仏花と言われるような花だが、それでもやはり母の好きなヒペリカムや黄色の花が入っていた。
お線香に火をつけ、供えるとようやく手を合わせることができた。
佐倉さんは無言でしばらく手を合わせていた。
ようやく顔を上げるとくしゃっとした顔をしてハンカチで目元を押さえていた。

「すまない。情けないところばかり見せているな」

泣き笑いをしていたがこの前の時のような泣き方ではなかった。
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