天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
彼が仏壇の前でお線香をあげてくれている間にお湯を沸かし、コーヒーの準備をした。
お洒落なお茶菓子がなく、私が作ったスイートポテトを並べるとコーヒーテーブルへ近づいてきた。

「ありがとうございます」

彼の所作はひとつひとつきちんとしており、秘書だと納得する。

「こんなものしかありませんがよければ召し上がってください。毎日のように来ていただいて申し訳ありません」

「いえ。社長からの仕事ですから。あ、今日は自分の意志で参りましたが……」

「佐倉さんは部下に恵まれているんですね。自分のために動いてくださる方がいるなんて人望があるんでしょうね」

私がコーヒーに口をつけると彼もカップを手に話し始めた。 
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