崖っぷちで出会った 最高の男性との最高のデート(ただし個人の感想です)
着替えて戻ると、朱音と上着を脱いでネクタイを外した悠が仲良く並んで座っていた。
二卵性の男女の双子の彼らはあまり似ていない。ただ二人とも背が高くてスタイルも良く、目鼻立ちのはっきりした美男美女なのは間違いない。
「あの、これ弁償しますから、おいくらですか」
さっきまで着ていたバスローブを洗って返すのも悪いので、お金で弁償しようと思った。肌触りの良い着心地抜群のバスローブ。目の前にいるこの男性が着ていたものだと思うと、妙に照れる。
「いや「いいのいいの。どうせ消耗品だから気にしないで」」
持ち主の悠が言う前に朱音が先に言う。
「どうしてお前が言うんだ。俺のだぞ」
「私の物は私の物。悠の物は私の物」
「なんだそれ」
「いいじゃない、バスローブのひとつやふたつ。それくらい買うお金あるでしょ」
仲がいいのか悪いのか。今のところ悠が朱音に押され気味だが、彼も別に嫌がってはいないのがわかる。
「うらやましい。私には姉妹がいないので」
姉妹がいたら、この最悪な状況も変わったいたんじゃないだろうか。
ここ最近娘の顔を見れば「申し訳ない、ごめん」と頭を下げる両親への愚痴を言い合えるのに。
「そう? 私は女の姉妹がほしかったわ。できれば妹。こんな可愛くない兄よりだんぜんいいわ。私のお下がりをあげたり髪を結ってあげたり、恋の話とかしてね。小さいときは悠を相手におままごとをやってたけど、そのうち嫌がられちゃって」
「当たり前だ。男がままごとなんかできるか」
「ふっる、ふる~。相変わらず頭が固いわね。今の男性はお金や顔だけじゃなく、家事もできないともてないわよ」
「もてない? 誰に向かって言ってる」
「はあ、それ、自分が振られたことないって自慢しているの?」
「自慢しているわけじゃない。事実だ」
最初は悠のことを怖いと思ったけど、妹とああ言えばこう言うという感じでポンポン言いながら、ソファの背に肘を置いてリラックスしている彼はとてもかっこよかった。
こんな人の恋人ってどんなだろう。振られたことがないといっていたが、彼を振るなんて人間がいたらお目にかかりたい。
まだ会って一時間も経っていないし、怒鳴られた相手だけど、自分の周りにいなかったタイプの悠に弓弦は見惚れていた。
三週間、婚活に勤しんだ結果、体目当ての男としか出会えなかった。それもそのはずだ。極上の男はあんなパーティーに参加などしないし、彼女の行動範囲の中になど生息していない。
彼らが参加するパーティーはもっと高尚でおしゃれなもので、そこに集う人たちもみんな一流。選ばれた地、このマンションのように高い場所にしかいないのだ。
夢・・叶わない夢を抱いていた。
高畠と結婚する前に年の近い男性と束の間の疑似恋愛をしようだなんて、自分はなんて世間知らずで愚かだったんだろうと弓弦は思った。
「それで、朱音と君の関係は? どうして俺の家にいるんだ」
「そうそう、お腹空いてない? 今から何か注文しよう思ってたの」
朱音がそう言って出前サイトの画面が映ったスマホの画面を見せる。
「おい、質問に答えろ。それにお前、朱里はいいのか?」
「朱里は佑にお願いしたわ。さっきのは二人で外へ食べにいくって電話だったの」
朱里とはさっき朱音が迎えに行っていた娘で、佑はその父親で彼女の夫だ。
「うちの顧問弁護士は奥さんに尻に敷かれているな」
「失礼ね、家族思いって言ってくれる? 佑は今でも私のこと愛してるって言ってくれるわよ」
「強要していないか?」
「してません。妻に愛してるも言えない男じゃありませんから、うちの佑は。言ってくれないと気持ちは伝わらないでしょ。私も毎日言っているもの」
「結婚してもう七年だろ。あまり熱を上げすぎるとすぐに冷めるぞ」
「冷めません。私と佑の愛は本物ですから。ねえ」
朱音が自分の下腹部に向かって話しかける。
「?」
悠は意味がわからず首を傾げているが、弓弦はピンと来た。
二卵性の男女の双子の彼らはあまり似ていない。ただ二人とも背が高くてスタイルも良く、目鼻立ちのはっきりした美男美女なのは間違いない。
「あの、これ弁償しますから、おいくらですか」
さっきまで着ていたバスローブを洗って返すのも悪いので、お金で弁償しようと思った。肌触りの良い着心地抜群のバスローブ。目の前にいるこの男性が着ていたものだと思うと、妙に照れる。
「いや「いいのいいの。どうせ消耗品だから気にしないで」」
持ち主の悠が言う前に朱音が先に言う。
「どうしてお前が言うんだ。俺のだぞ」
「私の物は私の物。悠の物は私の物」
「なんだそれ」
「いいじゃない、バスローブのひとつやふたつ。それくらい買うお金あるでしょ」
仲がいいのか悪いのか。今のところ悠が朱音に押され気味だが、彼も別に嫌がってはいないのがわかる。
「うらやましい。私には姉妹がいないので」
姉妹がいたら、この最悪な状況も変わったいたんじゃないだろうか。
ここ最近娘の顔を見れば「申し訳ない、ごめん」と頭を下げる両親への愚痴を言い合えるのに。
「そう? 私は女の姉妹がほしかったわ。できれば妹。こんな可愛くない兄よりだんぜんいいわ。私のお下がりをあげたり髪を結ってあげたり、恋の話とかしてね。小さいときは悠を相手におままごとをやってたけど、そのうち嫌がられちゃって」
「当たり前だ。男がままごとなんかできるか」
「ふっる、ふる~。相変わらず頭が固いわね。今の男性はお金や顔だけじゃなく、家事もできないともてないわよ」
「もてない? 誰に向かって言ってる」
「はあ、それ、自分が振られたことないって自慢しているの?」
「自慢しているわけじゃない。事実だ」
最初は悠のことを怖いと思ったけど、妹とああ言えばこう言うという感じでポンポン言いながら、ソファの背に肘を置いてリラックスしている彼はとてもかっこよかった。
こんな人の恋人ってどんなだろう。振られたことがないといっていたが、彼を振るなんて人間がいたらお目にかかりたい。
まだ会って一時間も経っていないし、怒鳴られた相手だけど、自分の周りにいなかったタイプの悠に弓弦は見惚れていた。
三週間、婚活に勤しんだ結果、体目当ての男としか出会えなかった。それもそのはずだ。極上の男はあんなパーティーに参加などしないし、彼女の行動範囲の中になど生息していない。
彼らが参加するパーティーはもっと高尚でおしゃれなもので、そこに集う人たちもみんな一流。選ばれた地、このマンションのように高い場所にしかいないのだ。
夢・・叶わない夢を抱いていた。
高畠と結婚する前に年の近い男性と束の間の疑似恋愛をしようだなんて、自分はなんて世間知らずで愚かだったんだろうと弓弦は思った。
「それで、朱音と君の関係は? どうして俺の家にいるんだ」
「そうそう、お腹空いてない? 今から何か注文しよう思ってたの」
朱音がそう言って出前サイトの画面が映ったスマホの画面を見せる。
「おい、質問に答えろ。それにお前、朱里はいいのか?」
「朱里は佑にお願いしたわ。さっきのは二人で外へ食べにいくって電話だったの」
朱里とはさっき朱音が迎えに行っていた娘で、佑はその父親で彼女の夫だ。
「うちの顧問弁護士は奥さんに尻に敷かれているな」
「失礼ね、家族思いって言ってくれる? 佑は今でも私のこと愛してるって言ってくれるわよ」
「強要していないか?」
「してません。妻に愛してるも言えない男じゃありませんから、うちの佑は。言ってくれないと気持ちは伝わらないでしょ。私も毎日言っているもの」
「結婚してもう七年だろ。あまり熱を上げすぎるとすぐに冷めるぞ」
「冷めません。私と佑の愛は本物ですから。ねえ」
朱音が自分の下腹部に向かって話しかける。
「?」
悠は意味がわからず首を傾げているが、弓弦はピンと来た。