【完結】エレベーターに閉じ込められたら、恋に落ちました。


 とも思ったが、そうでもないと思う。

「橋本さん、ちょっといいですか?」

「どうしました?」

 時枝さんの背中を見つめていると、商品開発部の後輩から声をかけられる。

「ちょっと相談したいことがあって」

「……わかりました。すぐに行きます」

 時枝さんのことばかりを考えてるせいか、なんとなく頭がぼーっとする。

「僕は、おかしいのか……?」

 あんなに年下相手に、こんな気持ちになるなんて。……どうかしているな。

「橋本さん?」

「………」

「橋本さん? 聞いてます?」

「……すみません、ぼーっとしてましたね」

 そんな僕の様子を見て、後輩の田中が声をかける。

「どうかしましたか? さっきから、上の空ですよ?」

「すまない。……ちょっと考えごとをしてた」

 僕はなぜ、あんなに彼女のことが気になるんだろうか。 彼女に何か、特別なものを感じているのか?
 特別な感情……なのか、これは。

「珍しいですね、橋本さんが考えごとなんて」

「そうですか?」

「もしかして、恋でもしたんですか?」

 ……恋? 僕が恋をしている?
 
「……そんな訳、ないでしょう」

 一体誰に、恋をしていると……?
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