年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「失礼します……」

 中の様子を伺いながら扉を開けると、知った顔を見つけてホッとしながら中に入った。

「わぁ! 咲月ちゃん! 久しぶり~!」

 真っ先に駆け寄ってくれたのは瑤子さん。香緒ちゃんの結婚式でお会いした以来だ。

「お久しぶりです、瑤子さん。今日はよろしくお願いします」

 そう言って少し頭を下げるとズリ落ちそうなバッグを持ち直した。そして、その先に立つ長門さんの元へ向かう。
 睦月さんよりおそらく10センチ程背が高い。睦月さんも、172センチある香緒ちゃんより背が高いのだから、低い方ではない。
 私は、長門さんのことを空を見上げるくらい首を曲げて上を向いた。

「……お誘いありがとうございます。長門さん。今日はよろしくお願いします」

 さすがに結婚式で顔を合わせたことはあるものの、ちゃんと話したことはなくて、目の前にするだけで緊張してしまう。けれど、睦月さんが色々話を聞かせてくれたおかげで、最初より少しその緊張感は和らいでいる気がする。

「悪かったな。急に。今日はこの部屋しか使わねぇから、控え室はない。コーナー作ってるから案内させる」

 長門さんはそう言うと「中川!」と誰かを呼んでいた。
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