年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 案内された、パーテーションに区切られたスペース。並んでいた長机に、私は道具を並べ始める。

 簡易スペースだけど、大きな鏡と照明は用意されている。こういう小さなスタジオでの撮影の時、たまに鏡さえ置いていないことがあって困ることがある。さすがは長門さんだ。キャリアが違う、とそんな小さなことで感心してしまった。

 道具を全部並べ終えた頃、向こう側が騒がしくなった。

 到着されたのかな?

 パーテーションから少し顔を出して様子を伺うと、向こうにミッシェルさんとマネージャーらしき男の人の姿があった。

 何を話しているかまでは聞こえて来ない。先に瑤子さんがミッシェルさん達と挨拶を交わしているようだ。そして、ゆっくりとその後ろから長門さんが近づいている。

 睦月さんは、『2人は知り合いじゃない。司の知り合いだったら俺もたぶん知り合いだから』と口にしていた。

 確かに今の様子を見ていると、長門さんは無表情で、ミッシェルさんの顔には緊張の色が現れている。少し距離を置いて、少しの間話していたかと思うと、長門さんは急に表情を和らげ、ミッシェルさんの頭をクシャクシャに撫でた。

 その光景を、私は驚きながら眺めていた。長門さんの顔が、結婚式で香緒ちゃんと話してた時みたいだったから。

その顔は、とても柔らかで、優しい顔をしていた。
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