年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 またすぐにさっちゃんに会えるんだ、と浮かれる暇はなく、現実は仕事に追われていた。
 土曜日までの3日間に納期もあるし、打ち合わせもある。職業的に忙しいって言うのは有難い事だけど、最近まで結構マイペースに仕事してたから、ここに来てのこの忙しさは中々に堪えた。

 そして、やらかした。

「さっちゃん! 本当にごめん」

 会うなり手を合わせて謝る。
 待ち合わせ場所近くのチェーン店のカフェ。
 気がつけば朝方までデータと戦っていた結果、俺は見事に寝過ごして約束の時間を30分ほど遅刻してしまった。

「だ、大丈夫ですから! 睦月さん、座って下さい」

 勢い良く走って来た上に着くなり謝る俺は相当目立ったのか、周りの人がチラチラ様子を伺っていた。

 俺、やらかしてばっかりだ……

 がっくり肩を落としながら、俺はテーブルに向かう。

「何か飲みますか? 私買ってきますよ?」

 心配そうに俺を見上げるさっちゃんの顔を見て、俺はあれ? と思う。
 あぁ、いつもとメイクが違うんだ。
 いつもは、あまり色味のないナチュラルメイク。けど、今日は何となく淡いパステルカラーが使われてて、リップもいつもより明るい。

「可愛い……ね」

 寝不足も相まって、心の声がダダ漏れになる。口に出してからしまったと思ったけど遅い。みるみるうちに顔を赤らめると、さっちゃんは立ち上がった。
< 184 / 611 >

この作品をシェア

pagetop