年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 最初の年は、有名ホテルの高級鉄板焼。高級過ぎると言うと、ホテルじゃない高級レストランになり、その後も普段絶対行けないような料亭とかお寿司屋さん、もちろん回ったりしない店に連れて行って貰ったと話した。

「今年が一番気楽かも。……プレゼント、何にしようかなぁ」

 さっちゃんは遠くを見ながらそう呟く。

「プレゼント渡してるんだ。俺も呼んで貰ったからにはそれくらい用意しないとなぁ」

 信号待ちしながら俺が言うと、さっちゃんは俺を見る。

「あの、睦月さん。良かったら一緒に選んでもらえませんか? その……被るかも知れないし……」

 おずおずとそう言うさっちゃんに対して、俺は笑顔になった。

「えっ! いいの? いつにする? この土日、と言うか大体の土日は空いてるよ?」
「なら……土曜日で。すみません、せっかくのお休みに」

 さっちゃんは申し訳なさそうな顔をするけど、俺は正直むちゃくちゃ嬉しい。
 顔に出そうなのを必死で隠して、「さっちゃんのお役に立てるなら光栄だよ?」と笑いかける。
 釣られるようにさっちゃんも表情を緩めると「楽しみです」と笑った。

 その顔を見て、キスしたいなぁなんて不埒な事を考えているなんて、さっちゃんは知らないんだろうなぁ、と青に変わった信号を確かめてアクセルをゆっくりふみこんだ。
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