年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 誰かをこんなに好きになったことも、自分を好きになって欲しいって思ったことも初めてなのに、それ以上の関係を望むなんて烏滸がましい。

 そんなことを考えて、溜め息を吐き出した。

「睦月君て……ほんと、鈍感だよねぇ……」

 目の前の信号が赤になったタイミングで、ハンドルに凭れかかるように私の顔を覗き込むと、香緒ちゃんは呆れたようにそう言った。

「そう……かな?」

 私はその香緒ちゃんの顔を見ながら答える。

「そうだよ! もっと鈍感だと思ってた僕や希海ですら、さっちゃんのことに気づいたのに、当の本人が気付かないってどう言うこと⁈」

 珍しく半分怒りながら香緒ちゃんがそんなことを言い出す。

「えっ! て言うか希海さんにも気づかれてるの⁈」

 信号が青に戻り、また前を向いてハンドルを握る香緒ちゃんに、私は慌てたように尋ねた。

「そりゃそうだよ。だってさっちゃん、睦月君とは最初から距離近かったもん。それが嫌そうでもなかったし」

 改めて言われると、猛烈に恥ずかしくて顔が熱くなる。

 そんなにわかり易かったの?

 でもそれは、何年も私を間近で見ていた2人だからこそ、なのかも知れない。
 睦月さんにとっては、それが普通にしか見えないのかな……。

 そんなことを思いながら、私はまた流れる景色に視線を送った。
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