年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
14.
「ごめんね。遅くまで付き合わせて」

 俺が遅くなってしまったせいで、さっちゃんの帰りまで遅くなってしまい、車に乗り込むと助手席に乗るさっちゃんにまず謝った。

「いえ。気にしないで下さい。睦月さんのせいじゃないですから」

 さっちゃんはそう言いながら、はにかんでいる。その顔を意識してしまいそうで、俺は視線を外してエンジンをかけた。

 さっきの謎の賭け。香緒はやっぱり、俺がさっちゃんのこと、どう思ってるか気づいてるんだろうなぁと思う。俺を励ましつつ、さっちゃんのほうをチラチラ見ていたから。

 弱気って言われても、弱気にもなるさ……。これだけ歳も離れている上に、さっちゃんは男が苦手なんだから

 そんな事を思いながら、夜の街を走り出す。年末の一番華やかな街。途中の並木道のイルミネーションが綺麗で、食い入るようにさっちゃんはそれを眺めている。

 チャンスは掴めと言われても、そのチャンスはいつやってくるのだろうか。今は、俺を好きになって欲しいって気持ちより、嫌いにならないで欲しいって気持ちの方が強い。
 それに今、さっちゃんに告白でもしようものなら、賭けに乗っかったみたいに受け取られてしまいそうで怖い。

 何か……1年後、結婚どころか同じことをグダグダ考えてそうだ。

 そう思っているうち、あっという間にさっちゃんの家の前に着いた。
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