年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「ありがとう。さっちゃん。楽しみだな」

 心の底からそう思う。さっちゃんが選んでくれたのなら、例え駄菓子一つでも嬉しい。きっと相手のことを思いながら色々考えて選んでくれたはずだから。

「はい……」

 それだけ言って俯くさっちゃんの頭をそっと撫でて「じゃあ、またね」と俺は言う。
 このままじゃ自分が何をしでかすかわからない。すでに抱きしめたいな、って思ってるのをなんとか堪えているのに。

「あのっ……!」

 俺が去ろうとすると、急にさっちゃんは顔を上げ、少し必死な形相で何か訴えかけるようにそう口にした。

「どうかした?」

 その様子に驚きながらそう尋ねると、さっちゃんは開きかけた口を閉じて、シュンとした様に肩を落とす。

「ら……来年も、よろしくお願いします」
「こちらこそ。……さっちゃんは、いつまで仕事?」
「私は週明け月曜日が最後です」
「そっか。俺も。……また、誘ってもいい……かな?」

 どうしようか悩んだけど、思い切って口に出してみる。そんな簡単な言葉なのに、心臓がバクバクいってるのがわかる。何の理由もない誘い。さっちゃんは一体どう思っているのだろうか。勢いに任せて言ってしまったけれど、その答えが怖かった。
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