年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 驚くより先に、何だかホッとした。
 呆れられたわけでも、嫌われたわけでもないんだって。

 もしかしたら、泣いてた私を慰めたくってこんなことをしてるのかも知れない。でも、睦月さんは私を大事だって言ってくれてるみたいにギュッと抱きしめてくれている。

 ずっとこうしていられたらいいのに

 初めてそんな独占欲に掻き立てられて、私は自分に回った腕に恐る恐る手を添えた。

「俺は……さっちゃんが、男が苦手で距離感があるのは知ってる。でも、俺にそれがちょっとだけ無いのは……お父さんに近いから? それとも、香緒の知り合いだったから?」

 私は、ちゃんと自分の気持ちを伝えるのは今しかないって思った。
 『後悔しないで欲しい』って言う香緒ちゃんの言葉が甦る。私のことを妹みたいだと思っていたとしても、私は……何も言えなかったって後悔したくない。

 私は添えていた手を握って、睦月さんの腕を解く。私に従うように睦月さんは腕を緩めるとそのまま下ろした。
そして、もうきっとグチャグチャだろう顔を気にすることなく振り返って睦月さんを見上げた。

「私……。睦月さんのこと、そんな風に思ったことありません。香緒ちゃんの知り合いじゃなくても、何才だったとしても……。私は……睦月さんを好きになったと思います」
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