年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 近くにいた女の子に、そんなことを言われた。かなり若く見えるその子は、もしかしたら10代なのかも知れない。

「えっ? あ……りがと……う。私で良ければ……」

 無碍に断るのも悪い気がして、私は話を聞くことにした。

『自分に合う色味が分からない……』

 そんな話で、私はその子の肌色や雰囲気から合いそうな色味を選んで勧めてみた。

「ありがとうございました! 私もお姉さんくらい可愛くなれそうです!」

 勢いよくそう言って彼女はレジへ向かって行く。

 私が……可愛い?

 自分のことじゃないみたいなその台詞に戸惑いながらその後ろ姿を見送っていると、入れ替わるように香緒ちゃんがやって来た。

「さっちゃんお疲れ様。向こうで店長さん喜んでたよ? 売り上げに貢献してくれたって」

 笑みを浮かべて香緒ちゃんはそう言うと続けた。

「それに、うちの商品をこんなに使いこなすのは綿貫さんが一番! だって。さすがさっちゃんだね」

 自分のことのように得意げに言う香緒ちゃんの顔を、私はまだ信じられないような気持ちで見上げていた。

「どうかした?」
「あ……。私が可愛いって……言われて」

 戸惑い気味に口を開いた私に、香緒ちゃんは当たり前のように言う。

「何言ってるの。さっちゃんはずっと前から可愛いよ?」

そう言って満面の笑みを浮かべた。
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