年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 電話を切る前、武琉君は不思議な事を言いだした。

『香緒から伝言なんですけど……今から送る写真に合いそうな服装で来て欲しいって。よろしくお願いします』

 しばらくすると写真が届いた。開けてみると、そこにはベージュのワンピースが写っている。

 一体……何のゲーム?

 そんなことを思いながらクローゼットに向かう。とりあえず時間もあんまり無いし急ごうか。そう多くはないワードローブの中から、指定された通りに写真のその服と並んでも浮かない服装を選んで俺は家を出た。

 指定されたのは、若者で溢れる繁華街にあるカフェの前。近くのパーキングに何とか空きを見つけて車を停めるとそこに向かった。

「ごめん! お待たせ!」

 人並みをかき分け武琉君のそばまで行ってそう声を掛けると、武琉君は眺めていたスマホの画面から顔を上げて俺を見た。

「いえ。こちらこそ突然すみません」

 そう言うと、武琉君は礼儀正しくお辞儀をした。
 その顔を見て俺は懐かしくなる。彼が小学生の頃、ちょっとしたお菓子をあげた時も同じようにお辞儀してたなと俺は微笑ましくなりながらそんなことを思い出していた。
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