年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「にしても。あの時は若いパパで良いわねなんて言われたけど、今は職質されそうだから! 普通に呼んでくれない?」

 クリームのたっぷり乗った甘そうな飲み物を手に、紫音は少し考える。

「じゃ、睦月」

 あっけらかんと言うところが子供の頃と全く変わってない。まぁいいか。初めて会った時に呼ばれた呼び方じゃなかっただけ。

「さすがに最初に会った時みたいに、おじさんとか呼ばないよぉ!」

 そう言って紫音は思いきり俺を笑い飛ばした。

「変わってないね……紫音……」

 乾いた笑いを漏らしながら俺が言うと、「そう言う睦月も変わってないよ?」と不思議そうに小首を傾げた。

「本当。2人とも親子みたい」

 俺達の様子を横で眺めていたさっちゃんが、急にそう言いながらクスクスと笑い出した。

「えっ? そう?」

 さすがに親子程歳が離れてるわけでも無いし、紫音が大人になったぶんそんな風には見えないと思うんだけど……

「でしょう? 睦月はきっといいパパになりますよ?」

 紫音も笑顔でさっちゃんにそう返す。

「ですね」

 さっちゃんがそう答えたところで紫音は立ち上がった。

「私、そろそろ店に戻るね。咲月さん! やっぱりその服とっても似合ってます。また店に遊びに来てくださいね!」
「是非、また寄らせてください」

 それを聞いて紫音はニッコリ笑うと去っていった。
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