年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「じゃあそうしようか。さっちゃんは座って待ってて」

 立ちっぱなしだった私に睦月さんはそう言って、香緒ちゃんとキッチンへ向かう。

「咲月さん、おせちどうしますか? 持って帰ってもらおうと思って折詰にしてあるんですけど」
「そうなの? ありがとう。遠慮なくいただくね」

 私が返すと「2人で食べて下さい」と武琉君は笑顔を見せた。

 それから武琉君はキッチンへ向かい、私は希海さんと響君のいるソファに向かった。

「悪かったな。正月早々香緒が世話になって」

 希海さんももちろん着物姿。元々が黒髪に涼しげな顔をした美形だけあって、オーソドックスな着物なのになんだか凄い迫力だ。

「いえ。楽しかったですよ? 香緒ちゃんの着物なんて仕事じゃなかなか無いし」
「それならいいんだが、睦月さんとゆっくり正月を過ごしたかったんじゃないかと思って」

 いつもの真顔でそう言われて、私は思わず勢いよく顔を上げる。

「えっ、と、香緒ちゃんから何か聞いてますか?」

 もちろん希海さんにはまだ照れくさくって何も言えていない。でも、香緒ちゃんから伝わっている可能性は高い。

「……いや? 何となくそう思っただけだ。賭けはどうも負けそうだな?」

 そう言うと、希海さんは少しだけ口角を上げ微笑んだ。
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