年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「凄い……」

 睦月さんの家のダイニングテーブルの上で、さっそくおせちの入った箱を開ける。それには、デパートで買ってきたの? って言うくらい本格的で見た目も美しい料理の数々が入っていた。

「ほんと、武琉君って器用だよね」

 睦月さんは同じようにおせちを覗き込んでそう言った。

「ですね。ちゃんと料理を始めたのは香緒ちゃん達と暮らし始めてからみたいですよ?」
「へー。そうなんだ。お店出せそうなレベルだよね」

 そんなことを言い合いながらお皿を用意して少し遅めの昼食にした。もちろんとても美味しくって、久しぶりにお正月らしさを味わいながら2人でそれをいただいた。


 私達のお休みは結構長くて、2人とも仕事が始まるのは翌週の中頃からだ。
 睦月さんには「一人でゆっくりしたい日もあるだろうから、無理しなくっていいからね」って言われたけど、仕事が始まれば会える日も少なくなるだろうから、私は睦月さんに無理させない程度に会いたいと答えた。

 それからお休みの間、毎日睦月さんは私の家に迎えに来てくれて、少し遠くまで出かけてみたり、睦月さんの家でゆっくり映画を見たりして過ごした。
そして……

「あー……とうとう明日から仕事だぁ……」

 私の家の前に停めた車の中で、肩を落としながら睦月さんは言った。
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