年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「お酒飲むからいいかな、って勝手に思っちゃって。すみません……」
「ううん? こっちこそごめんね。次はよろしく」

 ニコニコしたまま睦月さんにそう言われ、「はい。今度はお米も炊いておきます」と笑顔で返した。

 あとは……サラダだ。睦月さんは、中に入っていた蟹を箸で持ち上げると、「これって……本物、だよね?」と繁々と眺めていた。

「本物ですよ。地元の冬には欠かせませんから」
「いいなぁ……。蟹の本場……」

 しみじみそう言ってから、その蟹を口に運んだ。

「やっぱり美味(うま)いね! それに、ドレッシングも酸味効いてて合う!」
「ドレッシングはうちの母直伝です。お口に合って良かった」

 母が小さい頃からよく作ってくれたサラダのドレッシングは、凄く簡単だけど美味しい。こんなに喜んで貰えて、教えてもらった甲斐があったな、と思った。

 それからは、睦月さんが今日してきた仕事の話になった。

「今日の写真、春のフェア用カタログで使うって言ってたなぁ。よかったら来てくださいって担当の人言ってたし……、その時は行ってみようね? 凄く素敵な式場だったよ」

 そう言って目を細める睦月さんに、私はゆっくりと頷いて見せた。
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