年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
「さっちゃん、ほんとに気を使わなくってよかったのに。こんなに色々してもらって申し訳ないくらい」

 そう言って、睦月さんはすまなさそうな顔を見せる。

「私がそうしたかったんです。気にしないでください。それに……睦月さんが喜んでくれて、私……嬉しくて」

 そう返すと、睦月さんは腕を伸ばして私の頭を撫でる。

「うん。むちゃくちゃ嬉しい。凄く幸せ。こんなに嬉しい誕生日初めてかも」

 その、髪を撫でるその感触だけで、私の心臓は跳ねる。もっと触れていて欲しい、なんてことを思ってしまう。

「開けていい?」

 その言葉にハッとして、私は慌ててその箱を睦月さんに手渡した。
 グラスと同じ場所で買ったから、同じ包みがまたカサカサと音を立てる。私はそれを開けている睦月さんの横顔を眺めていた。

 そして、その包みから現れた箱を見て、睦月さんは小さく「え……」と呟いた。箱から、たぶん中身がわかったのだろう。
 そしてその箱の蓋を開け中身を見た睦月さんは、予想外の、どこか呆然としたような表情をしていた。

「……同じだ……」

 箱に視線を落としたまま、睦月さんがようやく呟いたのはその言葉だった。

「え? もしかして、もう持ってたんですか?」

 慌てて尋ねると、睦月さんは静かに(かぶり)を振った。
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