年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
 もう少しで全部挿入(はい)りそう、っていうところでさっちゃんは体を起こして俺に縋り付く。
 その背中を片手で撫でながら、「もうちょっとだから……我慢して……」と熱くなった息と共にそう吐き出した。

 コクコクと頷くさっちゃんの中に、俺はようやく全部を挿入()れると、ゆっくりとその背中をベッドに降ろす。

「全部……挿入(はい)ったよ?……わかる?」

 俺の言葉に少し苦しそうな顔をしながらも、さっちゃんは瞳を開けて俺を見つめた。

「……嬉しい……。睦月さん……。私、幸せです……」

 泣いているような、笑っているような、そんな顔をして、さっちゃんは涙を零している。

「俺も……幸せ。……さっちゃんの中……凄くあったかい……」

 涙を掬うようにその頬にキスを落とすと、さっちゃんはそれを、ウットリするように瞳を伏せ受け止めていた。

 愛を交わすって言う言葉の意味を、俺は今、この瞬間知ったのかも知れない。今まで、誰かの求めになんとなく応じてしてきた行為は結局快楽優先で、こんな風に、心の底から震えるほどの幸せを感じることなど無かった。

 少しの動きでも、ぎゅうぎゅうに俺を締めるさっちゃんの中。気を抜けばあっという間に達してしまいそうだ。

「あっ! あっ、んんっ」

 小さく漏らし始めたその声を聞きながら、俺はそんなことを思っていた。
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